年間第29主日C 出エジプト17・8-13 Ⅱテモテ3・14-4・2 ルカ18・1-8 22-10-16
イエスは言われます。気を落とさず絶えず祈りなさい。 あなたがたは今、人の悪辣な行為に苦しんでいる。無情な脅かしに心を痛めている。悪口がある。誹謗がある。暴力がある。
それらをじっと受け止めなさい。苦しみ、悲しみをすべて受け取りなさい。
どんな悪い事をする人にも神様は心を留めてくださる。神様はその人に、その悪いことをする人にふと善いことをしてくださる。 わたしは、新美南吉という、30歳で亡くなった童話作家の、「うた時計」という話を思い出しました。
田舎の道、12,3歳の少年が歩いている。34,5歳の青年がその道で、少年と出会う。偶然の出来事です。会話を始めます。何となく話始める。少年が言う。「寒い、おじさんオーバーのポケットに手を入れさせてくれよ。あんまり温かくないなー。」ふと触れる物がある。ちょっと触ってみると、丸い物。急に音が鳴りだした。天国の鳥が歌っている様なきれいな音楽だ。「これ何?」「オルゴールだよ。」うた時計の事を思い出した。「僕の薬屋のおじいさんの家にも『うた時計』があるんだ。大切にしまっていて、僕が行っても触らせてくれないんだ。そのおじいさんに息子がいて、悪い事ばかりして家を飛び出してしまったんだって。」そんな事を話していると、道が二つに分かれるところに来た。別れ別れになってちょっと行くと、おじさんが遠くから少年を呼んだ。少年が行くと、おじさんはうた時計と、懐中時計を少年に渡した。「おじさんは昨日、その薬屋に泊めて貰ったんだ。そして朝早かったんで、間違ってこのうた時計と懐中時計を持って来てしまった。薬屋のおじいさんに返してくれないか。」
しばらく行くと、自転車の音がした。薬屋のおじいさんだった。「廉、お前、この道をずっと歩って来たのか。誰か歩いている人はいなかったか。」「いたよ。その人と一緒だった。この腕時計、そのおじさんがこの二つの時計を間違って持って来ちゃったから、おじいさんに返してくれと渡されたんだ。」「あれはうちの息子、周作だ。昨日、何十年ぶりに帰って来て、長い間悪い事ばかりして来たけれど、今度こそ改心して真面目に働くと言って、昨夜、泊ったんだ。今朝、起きて見るともういない。あの極道者が時計を2つもくすねて、出て行きやがった。」「いや、おじいさん間違って持って来たと言っていたよ。僕に清廉潔白でなくちゃいけないと言っていたよ。」「そうか、そんな事を言っていたのか。」少年はおじいさんの手に時計を渡した。その時、時計は歌い出した。老人の手は少し震えていた。老人の眼に涙が浮かんでいた。少年はおじさんの行った方を眺めていた。
周作の心に廉少年の爽やかな心が入った。周作の心が響いた。不正な裁判官にやもめの心が入って来た。悪い心を持った者が多い。どんなに多くても、どんなに悪くても神様は放っておかれない。
放っておかれない神様。待ってくださる神様。
しかし、人の子が来るとき果たして信仰が見い出だされるだろうか。
静かに、緩やかに力強く神様は回心の機会を与えられている。わたしに心を向けておくれ。
わたしの子をあなた方のところへ送る。あなた方がわたしの言葉を聞くものになっていたらいい。
わたしはその時、キリストに涙する。あなたがたに涙する。
わたしたちがキリストの姿に入って行くことが出来ますように。